憲法・教育

こんな高校生活を送ってほしい

なぜ勉強するの?なぜ高校へ行くの?

みなさんも今日から高校生ですね。みなさんは高校生活で何をしようと思っていますか?「親に言われたから何となく」「友だちが行くから来た」という人はいませんか。高校生活の基本は、中学までと同じように毎日の勉強です。高校生活をはじめるにあたり、「なぜ勉強するのか」ということを考えてみましょう。

「いい成績をとっておかないと、将来いい大学に入れないから勉強する」
「大人になったときに困らないように、今のうちに勉強する」
「勉強しないと、立派な大人になれないから」
「学校は勉強するところだから」

この中に、君の気持ちにピッタリとくる理由はありましたか。「どれも説得力ない」と思った人もいるでしょう。そうです。「なぜ勉強するのか」という疑問には、誰にとっても正解といえる、はっきりした正解があるわけではないのです。でも、「なぜ勉強するの?」「なぜ高校へ行くの?」と思っている人が増えているのも事実です。

今から四〇年前には、高校に進学する人の割合は七〇%くらいでした。今では、それが九七%になっています。四〇年前には、家が貧しいとか、家の仕事の手伝いをしなければならないといった家庭の事情で、高校に進学できなかった人がいたのです。その当時にも、「なぜ勉強するのか」という疑問をもった中学生はいたはずですが、この種の疑問は、一種の「ぜいたくな悩み」と思われたことでしょう。

ところが、ほとんどの人が高校に行くようになった頃から、今度は高校に入って、したいわけでもない勉強をさせられるようになり、「どうして勉強しなければいけないの?」という疑問が生まれるようになったのです。さらに、現在の「補習づけ」「授業づけ」といわれる受験指導、勝利至上主義の部活動、それに体罰や無意味な校則など、高校のあり方自身が問われているのです。

しかし、「勉強すること、学校に行くこと、たくさん教育を受けることはいいことだ」という考えは、ほとんどの大人たちの共通した考えです。それは、それぞれ違う人生を送りながらも、人生のいろんな場面で勉強の必要性を感じているからです。
「夏目漱石や芥川龍之介の小説をまったく読まなかったら、人生について考えるうえで、何か大切なことに触れないまま大人になってしまうのかもしれません。あるいは、理科の観察や実験で身につくような、ものごとを注意深く見る目や、原因と結果の関係を結びつける考え方なしには、いつも感情に流されっぱなしで、自分のまわりの状況を冷静に判断する能力が養われないかもしれません」(苅谷剛彦著『学校って何だろう』より)
さあ今日から高校生になったみなさん、高校の三年間(四年間)で自分なりの答えを見つけてみましょう。

先輩はこう思う

従順なだけの学校はおかしい。高校の教育は自立するための教育だと思う。自由は魅力だし、大切にしたい。生徒中心の学校づくりを大切にしてほしい。僕の高校では生徒会が活発だ。自由だからできたし、生徒の自主活動を大切にしてほしい。〔府立高元生徒会長Y・N君〕

学力をつけよう!

本当の学力とは?

「学力」とは何でしょうか。本当の学力とは、現状を調べて分析し、課題を明らかにし、整理して他人に伝えたり、解決の糸口をさぐり克服していくことができる力、といったものでしょう。受験のための学力だけを考えがちですが、それは「学力」のほんの一部です。

どの類・学科に入ったとしても、「大学に進学するためには」ということでなく、自分にはどのような基礎学力が不足しているかを知って、前向きに克服しようとすることが、高校入学の今こそ大切です。

「がんばれ」だけでは…

日本の教育システムは「過度に競争的」といわれています。「受験以外の学習はムダ」と考える風潮や、逆に勉強に意義も熱意も失った高校生もいます。大変気がかりです。
ヤル気を支えるのは、

①将来への目標や、それへの展望があること
②やるべきこと(課題)がはっきり見えていること
③「わかる・できる」(達成感)が実感してとらえられること
④それがまわりから正しく評価され、励まされること

この社会の中で、自分がどのような役割を担っているか、目標と展望を青年たちは模索しています。親や教師には、高校生たちへのそんな助言や励ましが大切なのではないでしょうか。

家庭学習のススメ

高校で学ぶ目的は、豊かな教養を身につけるとともに、子どもの進路希望を実現することです。しかし就職ができなかったり、労働条件が悪い中で働かざるを得ない若者が急増しています。学校で学習する内容は、高校でも削減され、学校で獲得する知識の量も質も少なくなっています。

このようなときに、高校生が教科の学力を身につけ、「なぜだろう」と疑問をもち、自分で考え行動できる論理的な思考力を身につけることが大切です。そのためには、学校の授業が「わかり・できる」ようになり、教科の学習を支える「見えない学力」を育てることが求められます。それを育てるのが家庭における自主的な学習です。

ある府立高校の調査では、家庭学習の時間と学校の成績は見事に比例していて、家庭での学習なしには進路希望の実現は困難であるといえます。家庭学習の習慣は、一年のこの四月から身につけさせたいもの。そのために、次のステップを考えてみましょう。

ステップ① テレビを見たりゲームをする時間は、合わせて一日二時間以内に。
ステップ② 学校で学んだことは、その日のうちに復習し、わからないことを書きとめる。
ステップ③ 復習して「わからなかった」ことは、図書館で調べたり質問して解決する。
ステップ④ 毎日、本や新聞を読む。高校三年間で百冊の本を読もう。
ステップ⑤ 絵画、演劇、音楽などの鑑賞で質の高い文化にふれる。
ステップ⑥ 土・日に、学校で学ぶ以上の内容を参考書や問題集で自学自習をする。
ステップ⑦ 書くことは、理解を深め、考えを磨きます。新聞への投稿や読書感想文、小論文など機会を見つけて文章を直筆で書く。

生活は大丈夫?

高校生のアルバイトは?

暇をもてあまし、「アルバイトでも」と考える高校生も少なくないようです。しかし高校生のアルバイトは学校生活に大きな影響を与えます。
「疲れて朝起きられない」「ついつい授業をさぼって…」と、バイト中心の生活になってしまうこともありがちです。家庭学習の時間どころか体を休ませる時間もなくなり、当然しわ寄せは学校生活におよんでしまいます。
外食産業などは賃金の安い高校生バイトに依存し、高校生の弱い立場や社会経験のなさにつけ込んだ違法な雇用実態がかなり見られます。

「ネット社会」「ケータイ社会」の中で…

アルバイトだけでなく、ゲームやインターネット、昼夜を問わない携帯メールのやりとりと、生活のリズムを保つことが大変に困難になっているようです。
携帯電話はほとんどの高校生がもっていますが、家庭で携帯電話の使い方について話はされていますか。
携帯電話に関わるトラブルも増えてきています。「アダルトサイトを利用して高額な料金を請求された」「出会い系サイトに登録して登録料を請求された」といった被害の低年齢化がすすんでいます。最近の傾向としては、アダルトサイトを使う意志がないのに被害にあうケースが相次いでいます。

高校生の娘が、大学案内を取り寄せるため、携帯電話からフリーダイヤルにかけたら、テープ音声でガイダンスが流れた。指示に従い番号を押したらアダルト番組につながった。後日6万1500円を請求するメールがあり、怖くなって振り込んでしまった。その後24万円の請求電話がかかってきた。

高校生の場合、軽い気持ちや好奇心で利用し、高額な請求をされ、親にも話せず、ひとりで悩んでいることがあります。中には、高額な支払いをするために犯罪に手を染めるというケースも報告されています。
こういった事態を防ぐために、親子で話し合い、次のような約束をしておきましょう。

◎不当請求を受けたら、決して性急に振り込まず、親など第三者に相談する
◎「未承認広告メール拒否」「メールアドレス変更」など迷惑メール対策をする
◎インターネット上に個人情報を簡単に入力しないなど、個人情報流出防止対策をする

家族のふれあいと話しあいを大切に

やはりクラブ活動などの自主活動にも積極的にとりくむことが、学校生活にメリハリをつける近道です。もちろん学校やクラブによって活動状況もまちまちです。お子さんのクラブ活動に疑問があれば、遠慮せず顧問の先生と話し合いましょう。
できれば土・日のどちらかはクラブ活動は休みにして、家族とのふれあいの時間や、地域の文化にふれたりボランティアを体験するなどの機会を増やしたいものです。

子どもが「アルバイトをしたい」というときには親子でしっかり話しあい、お金の使い道や働く時間などの約束事をしっかり決める必要があるでしょう。
規律ある生活を送るためには、家族の援助も必要です。どんな若者も、「充実した毎日を送りたい」「前向きな生活をしたい」という思いを心の底に秘めています。子どもの生活だけを問題にするのではなく、家庭生活全体について、家族みんなで話しあえることが大切なのではないでしょうか。

「高校生と性」タブーにせず、親子で話しあいましょう

「うちの子に限って」でいけますか?

高校生と性の問題は、親が考える以上にすすんでいます。二〇〇二年の東京都の調査では、高校三年までに四六%の女子が、同じく男子は三七%が性交を経験しています。そのうち「いつも避妊している」の率は女子二二%、男子四六%にすぎません。府下の府立高校で行われた調査でも、ほぼ同じような傾向が見られます。

こうしたことを反映して、十代の若者の性感染症と人工妊娠中絶は、表のように直線的に増加しています。性の問題も含めて、健康で安全な高校時代を過ごしてほしいと願うのは、誰も同じ。どうしたらいいのでしょうか。

大切な自己肯定感

高校生になると、多くの生徒が恋愛願望をもつものです。そんな高校生にほしいのは、恋愛していてもしていなくても、自分の価値は変わらないという自己肯定感です。それに恋愛とセックスはイコールではありません。
妊娠や性感染症に無知で無防備なセックスはトラブルを招きます。自分の思いや相手の人権を大切にして、よく話し合って交際し、信頼関係を築きたいものです。

高校生は「寝た子」ではありません

一般的に、親は「うちの子に限って」と思いがちです。でもいまの高校生は「寝た子」ではありません。トラブルにあわないためにも、性について日頃から話しあえる環境を家庭内に築いておくことが大切です。
その際に、「あれはダメ」「これもダメ」と警戒や禁止を押しつけたのでは、「あなたは無力だ」と言って自己肯定感をそぐ結果になります。自分に自信をもって、「いやなことはノーと言える力」と、「相手と安心と安全の合意をつくれる自己決定力」こそ育んでおきたいものです。

それでもやっぱり、性について話し合うことは難しいもの。そんなときは、学校と協力しあって、きちんとした性の学習を保障することが大切です。

専門家も警告!

十代の性行動について研究する京都大学の木原雅子助教授は、「自分の子は関係ない-では済まされない時代になった」と警鐘を鳴らしています。性経験のある高校生の性的パートナー数は、「1人」が半数を割り、「2人」が2割、「4人以上」も約2割。毎回きちんと避妊していたのは30%にすぎない(2002 年、ある県の44校高校2年生調査)。こうした十代の性行動の特徴を、木原助教授は「無防備な性的ネットワークの発達」と説明。ネットワーク化されると、エイズや性感染症が流行しやすいといいます。また調査では、家族との会話が少ない高校生ほど性経験率が高いこともわかりました。

進路のことが心配です

毎日の学習生活の確立が第一

高校卒業生の就職が大変きびしくなっていることは、ご存じのとおりです。希望する職種・企業に就職するためには、高校で身につけるべき基礎学力を確実につけることと、なぜその職種・企業を選んだのかをしっかり自分で表現できることが必要です。
大学・短大・専門学校への進学も、さまざまな学部・学科ができ、入試方法も多種多様になっています。それぞれに個別の対応が求められますが、進路を切り拓くのは、やはりここでも基礎学力であることに違いはありません。

大学進学だからといって、塾や予備校に行くことが必ず必要だというわけではありません。むしろ、塾や予備校に通っているだけで安心したり、基礎が不十分なのに受験技術にかたよった学習ばかり早くからはじめることが、弊害を生むこともあるのです。
就職でも進学でも、授業を中心にした毎日の予習・復習、計画的で自主的な学習習慣、自分に合ったノートの使い方や勉強法を習得することが、基礎学力を着実に身につけ、学力を伸ばす道です。友だちや先輩や先生方の知恵も借りながら、自分なりの勉強法を高校生活スタートのなるべく早い時期に探り出すことが、何よりも大切なのです。

そして、授業で身につけた学習内容とともに、日本や世界の平和や環境問題などにも日頃から目を向けながら、社会の中で自分がどのような役割を果たして生きていくか、将来の生き方を考えながら高校生活を送ってほしいと思います

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